学会長挨拶


 作業療法のナラティブと多様性

 

 学会長 山田 勝久

(熊本駅前看護リハビリテーション学院)

このたび、令和5121日(土)、22日(日)の 2 日間にわたり、第18回熊本作業療法学会を開催することとなりました。現在、学会の開催に向けて、熊本市西ブロックの会員を中心とした学会実行委員会がその準備を進めております。

さて、昨今私たちを取り巻く社会や文化、価値観の「多様性」が注目されています。多様性とは、国籍や人種、年齢、個人の価値観や宗教、そして障がいの有無といった様々な属性を持つ人々が個人として尊重され、生き生きとした人生を送ることのできる共生社会を実現するためのキーワードです。異なる属性を持った人々がその差異を認め合い、自らの持てる力を発揮できるような、真に成熟したコミュニティの実現が、今まさに私たち一人一人に問われていると言えます。

そこで、今回の学会テーマは「作業療法のナラティブと多様性」といたしました。作業療法士は、ひとの健康を意味ある作業の実現によって支援する専門職です。今やその対象は身体障害、精神障害を持つ人の医学的リハビリテーションはもとより、高齢者の介護予防活動や障害を持つ子どもの学業支援、さらには地域住民の健康づくり活動など実に多様な領域にわたっており、様々な属性を持った作業療法士がその道のスペシャリストとして活躍しています。本学会では、作業療法の実践を1つの理論やモデルから読み解こうとするのではなく、それぞれの分野で展開されているリアルな実践の多様性と差異に触れる中で、作業療法の豊かさや新たな価値が問い直される機会にしたいと考えました。そして、そうした多様な実践の学術的な価値を伝える手段として、それぞれの領域で展開されている実践の物語性に着目することにしました。本学会で語られる作業療法の多様な物語(ナラティブ)に触れる体験は、普段の臨床実践に新鮮な問いを投げかけ、新たなヒントが生まれるきっかけになるものと確信しております。

なお、会場については未だCOVID-19の終息が見通せず、今後の感染拡大が懸念されることから、オンラインでの開催とさせていただきました。オンラインの強みを生かし、演者そして参加者の皆様とで対話が生まれ、作業療法の多様なナラティブが語り直されるような双方向性の学会にしたいと考えております。どうぞ、皆様普段着のままご自宅のパソコンから気軽に本学会にアクセスされてください。

 最後に、本学会での様々な出会いが皆様の日々の作業療法実践を深め、「参加してよかった」と思っていただけるような実り多い学会になりますことを祈念して、ご挨拶といたします。